(京都市立西京高等学校・藤岡健史、青森県立黒石高等学校定時制・下村誠、埼玉県立大宮武蔵野高等学校・中島聡) |
1.はじめに文理の融合を目指した「基礎情報学」は、現在および未来の情報社会を考え、そして新たに構築・改変する上で欠かすことができず、あらゆるタイプの生徒に必要な内容である。しかしその反面、高度な論理性から高校生には難解であるとされる節がある。この一般的な通説の正否を、タイプの違う3つの学校における授業実践から検証した。 |
2.目的と方法生徒の立場から、「基礎情報学」の内容伝達度とその効果をミニットペーパーを利用して評価・検証する。ミニットペーパーは選択式が1問、記述式が4問で構成した。選択式の選択肢は以下の通り。記述式に関しては配布資料を参照。 |
選択式の質問 授業の理解度について 「この授業内容の理解度を自己評価し、最も当てはまるものを選択してください。」
|
|||
3.調査対象の学校及び授業内容調査は基礎情報学研究会に参加している3名の教諭が所属する高校で授業実践の後におこなった。対象とした授業は、今年度の「基礎情報学」の基本的な内容(情報の定義、生命情報、社会情報、機械情報など)に関したセクションである。各校で行った授業は、西垣通著『生命と機械をつなぐ知』及び西垣通監修・中島聡編著『生命と機械をつなぐ授業』(いずれも高陵社書店)をベースとしているが、まったく同じものではない。内容はもちろん授業時間も含め個々の教員が生徒の状況によりアレンジや工夫を施している。なお、各校の特徴および授業の詳細は下記の通り。 |
| 京都市立西京高等学校 | 青森県立黒石高等学校(定時制) | 埼玉県立大宮武蔵野高等学校 | |
|
学 校 の 特 徴 |
|
|
4年制大学 18%、 短大 9%、 専門学校 40%、 就職 14%、 その他 19% |
|
実施 学年 |
|
|
|
|
授 業 ・ 調 査 方 法 に つ い て |
|
|
|
| 京都市立西京高等学校 | 青森県立黒石高等学校(定時制) | 埼玉県立大宮武蔵野高等学校 | |
|
理 解 度 |
|
|
|
|
記 述 式 の 回 答 例 |
|
|
|
|
実 施 教 員 の コ メ ン ト |
授業中、生徒は大変興味を持って授業に取り組んでいた(ミニットペーパーの理解度や、生徒のコメントからもうかがえる)。総じてディスカッションにも積極的に参加していた。おおむね計画通りの授業ができたと考えている。 授業コンテンツについては『生命と機械をつなぐ授業』をもとにし、授業者が話しやすい教材を適宜追加してアレンジした。アクティブラーニングの手法を併用したことが、理解度の向上に寄与した可能性があると考えている。 |
興味と関心を持って取り組んでいたのが印象的だった。授業では生徒に質問をするようにしているが、しっかりした反応を示していた。授業中に内容についての質問も多く受けるようになり、関心・意欲・態度とも概ね良好であった。以上は、双方向の授業を心がけた結果と思われる。ただミニットペーパーのコメントが少ないのが残念であった(簡単にコメントを書くよう指導したが書けない生徒が多い)。 |
どちらの授業も40%以上の生徒が概ね理解したと回答している。授業内容と時間数さらに生徒の学力レベルを考えると、記名調査であることを差し引いたとしても、非常に高い値である。ただ、理解度を低く申告した生徒でも、的確なコメントを書いている場合が多数見受けられる。したがって、自己申告のデータを鵜呑みにすることは性急であると思われる。 この2つの授業及びこれに続く「基礎情報学」に関する授業が生徒に対して強いインパクトを与えていることはYouTubeで公開している『生命と機械をつなぐ授業』ビデオからもうかがうことができる。 |
5.考察3校の実践はまったく同じではないので単純に比較することはできない。内容や授業形態もさることながら、実施した時間数すらも異なっている。それでも、一般的な学力が「基礎情報学」の理解度に影響していることがうかがわれる。また、授業に要した時間数も理解度に影響していることも分かる。しかし、これらは他の教科科目と同じで特筆すべきことではない。注目すべき点は、実施した3学校すべてにおいて評価が高いことである。また記述による回答例及び配布資料の回答例から、今までと違う観点を身に付けた生徒が多数出現していることが分かる。これは実践者の印象とも一致している。以上より、生徒の学力に合わせた授業展開をすることにより、少なくとも「基礎情報学」の基本的な内容は伝達されることは間違いないと判断できる。高校生に「基礎情報学」は難解すぎることは決してない。「基礎情報学」の有用性を考えれば、生徒の状況を踏まえた上で、積極的にその内容を取り入れてゆかなければならない。 |