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● 不定形成果物に対する相互評価の勧め(3)

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埼玉県立越ヶ谷高等学校
中島 聡

 前回は、運用で不可欠なシステムについて述べた。今回は、運用上の留意点
や課題などについて述べることにする。

○ 留意点

1.課題の種類とテーマの選定
 客観的に作品を評価することに慣れていない生徒が行うので、なるべくフェ
アな判断を下しやすい課題、またはそのような状況を作る工夫が必要である。
特に、発表の順番(前後の成果物の出来)が評価に影響を及ぼすようなものは妥
当とは言えない。一過性の強いプレゼンテーションのような成果物に対して、
何の配慮もなく相互評価を用いることは避けるべきである。ビデオなどを使い、
再現性を持たせる必要性があるであろう。
 テーマ選定も、全ての生徒が平等になるように気を配る必要がある。本人が
詳しく理解していない事柄を、優れた成果物にすることは不可能である。よっ
て、生徒ごとに得手不得手が生じるようなテーマは避けるべきである。テーマ
を統一する場合は細心の注意が必要となる。

2.評価項目の設定
 最低でも、他の項目評価に影響されないよう、各項目の独立性を十分に高め
ておかなければならない。また、各項目の主旨も理解されている必要がある。
さらに、このコンセンサスは評価時に限らず、作成時から十分に取れているこ
とが望まれる。

3.評価基準に対する指導
 個々の評価の平均値を使うことにより、評価に参加する人数が適当な規模に
なれば、個々の評価基準の差異はほとんど問題にならなくなる。むしろ問題と
なるのは評価分布の分散である。評価分布の分散が小さい生徒と大きい生徒が
いる状況で、相加平均値を使って評価を算出すると、分散が大きい生徒の評価
の比重が大きくなってしまう。分散が同じになるように指導する必要がある。
また、クラス間で差が生じてしまうことがあるので、成績として使用するとき
は別途の対応が必要となる。

4.文章による評価に対する指導
 文章をデジタルに集計することは難しく、往々にして評価文章をそのまま評
価者に伝えることになる。したがって、言葉使いや表現に注意を促さなくては
ならない。2003年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)結果にもあるように、
今の高校生の読解力や表現力は明らかに低下している。何も指導せずに評価を
行うと、日本語として不適切な文章が乱れ飛ぶことになる。モラル面を含めて、
十分な指導が必要である。

○ 課題

 授業後のデータ分析で、集計した相互評価と教員の評価がかけ離れ、全く当
てにならないような結果は出ていない。極めて良好なものである。が、項目間
の評価値の関連性など細かい点では多少の問題が見つかっている。相互評価は、
正当な評価が多く集まってこそ意味を成す。しかしながら、評価を行う生徒は
不慣れでなかなか要領を得ていない。したがって、評価の質を上げなくてはな
らない。その方法は色々と考えられるであろうが、最終的には評価内容の評価
にたどり着くのではないか。留意点でも述べたが、評価の分布や文章による評
価などを評価する方法を考案する必要性を強く感じている。

 3回にわたって、思い付くままに相互評価について述べてきたが、いかがで
あったろうか。お目にとまり、授業の参考になれば幸いである。
(おわり)